一期一会。−1−
そろそろ改めないと殺されかねない。

…でも、今日は、怒られるのも覚悟で来たから構わない。

「…で、何の用?」

夕暮れ時の誰もいない廊下に、葵の無機質
な声が響く。

葵は、いつもの無表情で静かに問う。

そうそう、これが通常運転だな。

俺から喧嘩を売るのもあんまりな話なの
だが、あの子と出会ったこと、並びに、
興味を持って関わりたいことを葵に
伝えなければ、俺が抜け駆けしたみたい
になるし。

それは、フェアじゃねぇよな。

俺からしてみると、一人の女を取り合うのはおもしれぇけど、葵からしてみれば
最悪でしかない展開だろう。

どうやら、真面目に好きらしいし?

でも、そんなんで引いてやれるほど、
俺は甘くないし優しくもない。

『…お前、最近仲良い女がいるん
 だって?』

敢えて名前は伏せて聞いたら、葵は分かり
やすく頬を引きつらせた。


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