一期一会。−1−
とはいえ、会ったのも偶然、ていうか
事故で、落ちてきたのを助けたくらいだから恋愛要素はどこにもなかったけど。

葵に加え、桃李も悔しげに片手で顔を
覆っている。

おいおい、お前らもっと怒れよ。

この様子を見る限りで言うと、噂が
想像以上に広がっていることを知らなかったらしい。

…こいつら、馬鹿なのか?

こっちが驚かされるわ。

他校の俺でさえ知ってんだから、これからもっと話題性が出てくるだろうな。

残念だったな、アイツはもうお前らだけの
お姫様じゃねぇんだよ。

葵は、俺の彩羽と出会った事情を
聞きもせずに絶望した顔で俺を見やる。

「…まさか、由宇も、彩羽ちゃんに
 惚れたの…?」

この世が終わりそうな顔をしている。

その瞳は、俺に違うと言ってくれ、と
懸命に訴えかけていた。

…前言撤回。


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