一期一会。−1−
知らない、…知らないよ?そんなの。

どういうことなの?

氷室さんと桃李さんは、茫然自失する
私に顔を見合わせていた。

「彩羽…知らなかったのか?」

ゆっくりと、確かめるように、慎重に尋ねてきた白鷺さんに、私は首を縦に振る。

どうして…、ソウ君?

私、聞いてないよ?

この気持ちをなんて言えば、いいの?

1番信じていた人が…隠していたこと。

仕事って、組に関することだったの?

だから、いつも高そうなスーツ着てるの?

組って…そりゃ、喧嘩も強いわけだよ。

『ソウ君のバカ…』

こんなこと、隠して、馬鹿じゃないの。

これくらいのことで、私がソウ君のこと
嫌いになれるわけがない。

だけど、だけど!

私は、怒っていた。

ソウ君は、私のことを巻き込みたくなかったんでしょ?

いつでも、安全でいられるように、
氷室さんまで使って。

組同士の抗争や拉致被害に巻き込みたく
なかったんだよね?

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