一期一会。−1−
人数が増えて、賑やかになった空間に
いつの間にか和んでいた。

数時間後、解散になって、皆と連絡先を
交換した私は、氷室さんに家の近くまで
送ってもらっていた。

いや…、なんでよりによって氷室さんなの?

まぁ、ジャンケンで決まったから文句
言ったって無駄なんだが。

別に一人でも平気なのに、と拗ねる私を
氷室さんは「危ないから」と宥めすかす。

こんな格好じゃどの道喧嘩できないから、
従うしかない。

夜道を、二人で並んで歩く。

風が涼しくて、気持ちいい。

「彩羽ちゃんは、一人暮らしなの?」

またプライベートな質問か。

デリカシーを少しは覚えてくれないかな?
 
『秘密です』
 
「一人なんだね」

チッ、見破られた。

この人、嘘発見器でも持っとんのか。

「気を付けなね、かわいいんだから」

うわ言みたいに、かわいいを言うんじゃないよ。

アンタは私の彼氏か。

氷室さんに言われると、余計に
恥ずかしくて困る。

こんなの、私らしくない…。


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