一期一会。−1−
絶対腹黒だろ…、この人。

そんなものを誕生日に贈られた日には
絶交しますからね?

冗談だよ、と苦笑する桃李さん。

全く…と呆れていたら、地面に、
いやカーペットの上に、何かが転がっているのに気が付いた。

…ん?

桃李さんを引っ張らないように、腰を屈めてソレを拾う。

『…うさぎ?』

かわいいピンクのモフモフしたソレは、
ウサギの人形。

チェーンが外れていて、落とし物らしい。

…まだ、新しいものだし、もしかしたら
持ち主が探しているかも。

そんな不安が過ぎる。

「どうかした?」

ウサギの人形を、手に持ったまま動かない
私に桃李さんが話しかけてくる。

他の二人も、不思議そうにしていた。

…これ、落とし物センターに届けなきゃ。

『ごめんなさい、ちょっとお手洗いに
 行ってきます』

皆を巻き込むのは申し訳なくて、
一人で行くことにした。

「え、あ、うん。

 いってら」


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