一期一会。−1−
ウサギの人形を手渡すだけなのに、
何故か嫌な予感がした。

投げ捨てていいかな…?

あ、こんなところに…みたいな流れに
なんないかな?

そう思うけど、拾ったのも、届けるって決めたのも私なわけで。

…放っておけないよ。

自分が背負った業だからな。

ドクドクと緊張でおかしくなる心臓を
服の上から押さえて、一歩足を踏み出す。

こ、コミュ障でもやればできるはず!

『あ、あの!』

「…?」

は、話しかけてしまったぁ!

思ったより、大きく出た声に、イケメンさんはくるりと私の方を振り返る。

臆病なので、目がかち合っただけで
心臓が壊れそう。

人見知り絶賛発動中。

「…今の、君?」

『…っ、えっと、その…これ!』

私を目に入れて、不思議そうな彼の前に
走っていくと、ウサギの人形を差し出す。

「…これ、君が拾ってくれたの?」

落ちてくる声に、ビクッとしてしまう。



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