一期一会。−1−
藍色のパーカーに、男の声。

正体不明な上に、最強の伝説。

とりわけ喧嘩に目がない俺は、俄然
くいついた。

“王蝶”を見つけたいなら、青火に行けと
勧めたのも壮太さんだった。

俺は、どうしても、“王蝶”を知りたくて
仕方なかった。

“王蝶”に、会いたかった。

まさか、俺以外に壮太さんが弟子を
持っているなんて思わなかった。

隠され続けた、最強の愛弟子。

壮太さんは、その後、“王蝶”とどんな関係
なのかも、“王蝶”が何者なのかも、
高校に入ってから、最近まで、少しも
教えてくれなかった。

…でも、焦らされて良かったと思う。

…本気で、彩羽ちゃんに出会えてよかった。

ー…時雨と、愛を傷つけたのが、
  今なのに。

愛は、帰り際、俺に向かって、
「葵」と名を呼んだ。

その声は、震えていた。

『…何?』

「葵を変えたのは、…奥薗彩羽?」

『…っ!』


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