一期一会。−1−
愛は瞳を揺らして、悲しげに問うた。

…全部、分かってるのか…?

幼なじみも、伊達じゃない。

明らかに動揺した俺に、愛は「そっか」と
一人でに納得して…。

そのまま、俺の首に、腕を回すと
触れるだけのキスをしてきた。

お互いの視線が絡む。

『…は?』

理解が、できなかった。

「バーカ、油断しすぎ」

キスは、初めてではないけど。

それでも、かなりの衝撃を受けていた。

愛の行動が、信じられなくて。

…時雨が好きなんだろ、お前。

どんだけ拗らせたら、そうなんだよ?

大して反応がない俺に、愛は袖で口を
拭うと、小悪魔な笑顔を浮かべた。

「私なりの、復讐。

 彩羽ちゃんのケア、よろしくね」

いつもの笑顔で、やけに残酷なことを言う。

『愛っ!』

立ち去ろうとする愛を引き止めようと
するが、その手を避けられてしまった。

さっと、両手を後ろに組んで、意味深に
にっこり笑うと俺の後ろを指さした後、
人混みに紛れて去っていってしまった。


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