一期一会。−1−
後ろを振り返れば、制服姿の彩羽ちゃん。

…まさか、今の。

顔に表情がなく、呆然と突っ立ったまま
俺を見ていた。

そして、数秒後には、彩羽ちゃんの目から
涙が次々に零れ落ちていく。

…え?

『あ、彩羽ちゃ…「近付かないでっ!」』

いきなり泣き出した彩羽ちゃんが心配
で近付いたら、思いっ切り拒絶された。

為す術もなく、しゃくりあげる彩羽ちゃん
を離れたところから見守るだけ。

通り過ぎていく人々は、何だ何だと
驚いたように見ていく。

き、キスは衝撃だったか?

泣いている理由が分からなくて、
手を拱いていたら。

「…彩羽、行くぞ」

『…っ、ゆ、う?』

俺の横を颯爽と通り過ぎて、彩羽の
手を取り、引っ張っていく由宇。

…今、彩羽ちゃん、由宇って言った?

いつの間に、仲良くなってるの?

突然現れた由宇に、彩羽ちゃんは、
抵抗もせずに引っ張られている。


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