一期一会。−1−
極め付きはそこ。

衝撃が走って、言葉が出てこなかった。

信じられない。

てか、信じたくないって言ったほうが
正しい。

…だけど。

微笑む彼の顔をじっと見ていたら、
確かに、ソウ君と似ている気がしてきて。

ソウ君は、この人…氷室さんとつながって
いたってこと?

それなら、ソウ君が私に付いていたGPS
の犯人が誰なのかを疑うそぶりを全く
見せていなかったことも納得できる。

…でも、じゃあ、ソウ君は氷室さんと私を
会うように、一連のことを起こしたのは
何故?

私のこと、隠し続けずに、ここで
出会わせたのは、どうして?

「少しは納得できた?」

できるわけないよ、ばか。

頭の中ぐっちゃぐちゃだよ。

情報が脳内ミキサーで、滅茶苦茶だよ!

ソウ君は、勝手に私をこの人に売ったって
ことでしょ、最低!

どんな魂胆かは知らないけど、
一言、言ってくれたっていいじゃんか。

私は、私の正体は、秘密のままで
いいのに…。

“頑張れ”なんて、遠回しの説明
わかるわけない!

内心腹が立って仕方がなかったけど、
ソウ君がしたことなら、抗えるはずも
なく。

…だって、ソウ君の言うことは絶対
だもん。

この状況も、飲み込むしかない。

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