年上のお姫さま
褐色の髪や瞳が多いこの国で、私の自慢の金髪や碧眼は珍しい物だった。
その王子様は私を不気味だと言って泣いた。
年々成長する王子様は、私をババアとか年増と呼ぶようになった。
傷付いたら負けだと思った。
心なんて両親が殺された時に失った。
祖国を守るために、私はここで耐えないとならない。
無邪気な王子様は私に本を読ませるのが好きなようで、毎夜物語の本を私の寝室に持ち込むようになった。
無駄に豪華で寒々しい天蓋付きのベッドに入ってきて私の朗読を聞く。
とても純心で素直な王子様であり、物語の進行にいちいち表情を変えるのだ。
ハラハラしたりドキドキしたり涙ぐんだり。
こんな子供が欲しかったなぁ、なんて思いながら毎夜読み聞かせをした。
王子様は、意味のわからない言葉なんかを質問してきたりした。出来るだけ答えていたら、「お前は博識だなぁ」と感心された。
やることがないから勉強しただけだ。
そして、私がいつも顔色が悪いのは寝不足なのだろう、と子守唄を一生懸命歌ってくれた。
他の王侯貴族からも平民からも嘲笑われるような立場で元気いっぱいでいられるわけはない。
寝落ちする王子様を、従者の人が荷物みたいに連れて帰ってくれる。
それが日常だった。
王子様は六歳になり、私にいろいろ勉強のことを聞いてくるようになった。
そして、いつも上等なお茶を用意してくれて、毎日のように二人で日の当たるテラスで飲んだ。
ここは王子様お気に入りの特等席らしく、気に入られた人しか同席を許されないらしい。
家庭教師みたいな扱いだろうか。
そして、優雅にこの国の伝統楽器の笛を演奏して聴かせてくれるのだ。
どういうつもりなのかと思って聴いていたのだが、「どうだった?」といつも無邪気に聞いてくるので、「お上手ですね」と適当にお世辞を言うと、ニコニコっと微笑んできた。
聞くところによると、なかなか演奏が難しい楽器らしい。そしてこの王子様は幼いながらかなりの名手なのだとか。
確かに美しい音色だ。
そんな日々が続くので、「どうして聴かせてくれるのですか?」と質問した。
「お前は美味しいお茶を飲んで、俺のフルールを聴いている時が一番優しい顔をしてるからな。えっと、その顔が……大好きだ」と、ぷにぷにのほっぺたを真っ赤にして言われた。
子供の戯言だろう、と「ありがとうございます」などと適当に流した。
それからも王子様は私とお茶をしてフルールを聴かせてくれた。
めきめきと上達するのがわかる。