漆黒の女帝

「私がいるのは反対方向だぞ。お前は方向音痴なのか？それならば、私がずっと手を引いてやらないとな」

妖艶な笑みを浮かべて立っていたのは、昨日鉄の棒で拷問を行っていた女性だった。女性が「ほら、こっちへおいで」と手を差し出す。昨日の夢が鮮明に思い出され、北斗は体を震わせた。

「嫌だ！！」

女性について行けば、どんな恐しい目に遭うか想像もつかない。北斗の顔は一瞬にして真っ青になり、女性に背を向けて走り出す。

「ッ！あの男を捕らえよ！」

女性が後ろでそう叫び北斗が振り返ると、暗闇の中から恐しい姿をした怪物が何体も姿を見せる。それは蟻のような形をしているものもいれば、蛇や蛙のような形をしたものもいる。そして、その怪物たちは北斗を迷うことなく追いかけてきた。

「だっ、誰か！！誰か助けて！！」

北斗が悲鳴を上げるも、その声は虚しく暗闇に響くだけだ。誰かが駆け付けることも、誰かの声がすることもない。ここに北斗の味方などいないのだ。