漆黒の女帝

後ろを振り返れば、怪物たちが猛スピードで迫ってくる。必死に北斗は足を動かすも、何かに躓いて固い地面に転んでしまう。

「うっ……」

擦り剥けた膝がジンと痛み、熱を持っていく。だがここで倒れていれば捕まってしまう。北斗は立ち上がろうとしたのだが、その手が道に落ちていた何かに触れる。恐らくこれにぶつかって転んでしまったのだろう。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！！」

落ちていたものを目にした刹那、北斗の口から大きな悲鳴が上がる。そこにあったのは人のものと思しき骨だった。北斗がよく目を凝らすと、骨のようなものは道のあちこちに散らばっている。骨にこびりついた腐った肉に虫が集っていた。

「うっ……」

あまりにも恐ろしい光景に吐き気が込み上げ、北斗はその場で嘔吐してしまう。胃の中は空っぽだったのだが、黄色い胃液が何度も口から出て行き、北斗の着物と地面を汚していった。

その場から動けなくなった北斗を、怪物たちはぐるりと取り囲む。これで北斗は逃げ場を失ってしまった。