漆黒の女帝

北斗を取り囲んだ怪物たちは、顔を見合わせて何かを話している。だが、何を話しているのか北斗には理解できない。怪物たちが人とは違う言葉を話しているのか、それとも混乱している状態の自身の脳が思考が停止させているのか、北斗にはわからなかった。だが、また吐き気が込み上げてその場に嘔吐する。

「ハァ……ハァ……ゲボッ！ハァ……ハァ……ヴェッ！」

北斗の頰を涙が伝う。ぼんやりとした頭の中で、怪物たちがゆっくりと自分の方へ近付いていることだけはわかった。



「ーーーおい！北斗！」

強く揺さぶられ、閉じられていた北斗の目が勢いよく開く。開いた瞳から涙がまた溢れ、北斗はガバリと飛び起きた。動悸が止まらず、息が上がっている。北斗は黙って肩を上下に動かしていた。そんな北斗を見て、修行仲間は怪訝そうな顔をする。

「お前、大丈夫かよ？それに何で着物が汚れて、足に怪我してんだ？」

その言葉に北斗は自分の体を目を向けた。足は擦り剥いて血が滲んでおり、着物は胃液で付着している。それを見て、北斗の体に寒気が走った。