ヒロイン覚醒要員である黒幕お父様の暴走を阻止します 〜死なないために愛嬌を振りまいていたら、不器用な愛情過多がとまりません〜
「…………お前は、おかしな子どもだ」
わずかに残っていた躊躇いを払拭するように、クリストファーはそう声に出すと私の手にあるルナキュラスの花に触れた。
「誰に似たのか、考えなくともわかる」
輝く花と、憂いを含んだクリストファーの表情。
思わず私は、目を奪われていた。
(気づいて、ない? いま、どんな顔をしてるのか)
それは初めて見せる感情。
穏やかでいて、ひどく寂しそうで、苦しそうで。息が詰まる。
よくわからないけれど、そんな姿を見ていたら目頭が熱くなって涙が落ちそうになった。
私は慌ててゴシゴシと手で拭う。クリストファーがこちらに目を向けないうちに。
「……?」
「へへ、お父様とルナキュラスの花。どっちもきらきらしてて綺麗だね。まぶしくて目がちかちかしちゃった」
「やっぱりおかしな子だ」
もう一度、私は密かに願うことにした。
どうかクリストファーが悪魔と契約を結びませんように、悪魔の囁きに負けませんように、死にませんように。
素っ気なくされても、深い関心を向けられなくても、恨まれていようとも。
だってこの人はいま、こうして生きているんだから。
死んでいい理由がない。