ヒロイン覚醒要員である黒幕お父様の暴走を阻止します 〜死なないために愛嬌を振りまいていたら、不器用な愛情過多がとまりません〜
外に出るからと着込んできたつもりだったけど、それでも体が冷えてしまったようだ。
まずい、人前でそれなりに大きなくしゃみをしてしまった。
近くにいるのが気心の知れたシェリーなら問題ないものの、いま一緒にいるのはクリストファーとロザリン兄弟。
前にどこかで聞いたことがある。貴族同士でこういう粗相を見せるのはあまりよろしくないということを。それを思い出した私は、慌てて謝る。
「ご、ごめんなさい。ちょっと寒かったみたいで、くしゃみが……ふえへっくしょん!!」
今度はさらに大ボリュームで出てしまう。なんということ、最悪だ。
しかもこういうのって一度出ると止まらなくなってしまって、まだ鼻の奥がムズムズとしている。
必死に抑え込もうと両手で顔を覆っていれば、ふわりと私の体に暖かい何かが掛けられた。
(……なんだかぶ厚い毛布みたいな)
顔から手を離して確認してみる。
「…………お父様、これ」