ヒロイン覚醒要員である黒幕お父様の暴走を阻止します 〜死なないために愛嬌を振りまいていたら、不器用な愛情過多がとまりません〜
見知らぬ美少年と鼻歌
夜になった。
昼間、ジェイドに手紙を渡せたけれど、ほかにも思いついたことがある。
(よしよし、シェリーもほかの人たちもいない。今がチャンス!)
午後からたくさんお昼寝もしたので目は冴えている。
私はベッドから降りて、こっそりと部屋を出た。
「……いっくしゅんっ!」
薄暗い廊下を進む。部屋にあったショールを羽織ってきたけれど、それでも寒くてくしゃみが出た。
さすが北の領地。夜は防寒無しだと凍えるほどである。
何度か鼻をすすって目指すのは、二階の書庫室。
シェリーと一緒に何度か来たことがあったので、その記憶を頼りに進んだ。
途中で男性使用人と鉢合わせしそうになったけれど、うまいこと隠れて難を逃れた。