ヒロイン覚醒要員である黒幕お父様の暴走を阻止します 〜死なないために愛嬌を振りまいていたら、不器用な愛情過多がとまりません〜


 実を言うと、この愛嬌振りまき心揺さぶり作戦は、今日で三日目である。

 一日目は、自分に言っているのかと疑いの目を向けられた。
 二日目は、言葉こそ交わさなかったけれど何秒か視線がぴったりと合った。


 そして、三日目の今朝。

「お父様〜〜!! 今日も良い天気だね!!」
「……お前にはこの曇天が晴れやかに見えるのか?」

 ため息ついでに吐かれた言葉に、私は嬉々として窓枠からさらに顔を出す。

「わあーお父様、やっとお話してくれた。良い天気っていうのは、空のことだけじゃないんだよ」
「なに?」
「今日もお父様に会えたから、空は曇りでもアリアにとっては"良い"天気なの」
「……訳が分からない」

 謎理論を聞いたあと、クリストファーは眉間に皺を寄せてしまった。

 同じく私の話を聞いていたほかの騎士たちは、どう反応すればいいのか戸惑っている。

 つい先日、クリストファーから「気分が悪い」と言い放たれてしまったけれど、私はそんなのは忘れたと言わんばかりに話しかけていた。

 でも、三日経ってようやく観念したように口を利いてくれるなんて……人に慣れていない野良猫並に手強いな。

< 23 / 106 >

この作品をシェア

pagetop