ヒロイン覚醒要員である黒幕お父様の暴走を阻止します 〜死なないために愛嬌を振りまいていたら、不器用な愛情過多がとまりません〜
おやつと似顔絵
目覚めると熱はすっかり引いていた。
昨日の夜はあんなに辛かったはずなのに、頭がすっきりしている。なんというか爽快感まである。
「シェリー、お腹すいた」
「まあ、もう食欲が? それでは、温かいスープをお持ちしますね」
入浴は大事をとって控え、シェリーは軽く体を拭いて着替えを済ませてくれた。
ひとまず胃に優しいスープを持ってくると言って、嬉しそうに部屋を出ていく。
とても心配していたので、去り際の横顔は体調が回復したことに安堵していた。
「ねえ、サルヴァ」
「なんだ」
私は気になったことがあり、膝に乗せたぬいぐるみ状態のサルヴァドールに声をかける。
すると、サルヴァドールはあっという間に人型になってベッドサイドに腰掛けた。
「昨日、私の頭撫でてくれた?」
目を合わせて聞いてみる。
朧気だけど、そんな記憶が残っていた。
シェリーのとは違う冷たくて大きな手。夜にこの部屋に入ってくる人は限られるので、シェリーを除くとサルヴァドールしか思いつかなかった。
普段はやる気がないというか、素っ気ない感じなのに、案外優しいところもあるんだな。
なんて見直していたのに、返ってきたのは予想外の答えだった。
「それ、俺じゃなくて、お前の父親な」