ヒロイン覚醒要員である黒幕お父様の暴走を阻止します 〜死なないために愛嬌を振りまいていたら、不器用な愛情過多がとまりません〜



 さらりと告げたサルヴァドールに、私はぱちぱちと何度か瞬きをする。
 そして、ふう……と肩を落とした。

「なんだ、夢の話かぁ」
「おい、信じられないからって夢にするやつがあるかよ」
「でも、お父様が頭を撫でるなんてありえないし」
「オレはそんな面倒な嘘はつかない」

 確かにサルヴァドールは期待をもたせることは言わなそうだけど。
 だからといってあれがクリストファーだとは素直に受け入れられなかった。

 この間まで私に無関心だった人が、こんなにも早く変化を表に出すのだろうか。

「言っただろ。容赦なく、やり過ぎなくらいあいつを揺さぶれって。その効果が少し出てきてるってことだろ」
「その効果が、心にできた隙?」
「ああ」

 しつこいくらいの愛嬌を振りまいたおかげで、お父様は私に意識を向けつつあるらしい。

 あんまり実感はないけれど、疑っていても仕方がない。それに良い方向に進んでいるなら、喜ぶべきことだ。

「……だが、思っていたよりも精神の状態はよくなかったな」
「それ、どういう……って、よくなかったって、なんで知ってるの?」
「昨日の夜、あいつの部屋まで行って少し覗いたんだよ」
「ええっ」

 私にとってはかなり重大なことを、サルヴァドールはさも当然のように言う。

 悪魔が取り憑いているため深くは干渉できなかったという話だけど、その顔は何かを知ったように見えた。


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