ヒロイン覚醒要員である黒幕お父様の暴走を阻止します 〜死なないために愛嬌を振りまいていたら、不器用な愛情過多がとまりません〜
入ってきたのはシェリーだった。
「起きていらっしゃったのですね」
「うん、起きた。アリア、お父様のところで寝ちゃったんだよね?」
「ええ。ジェイド様が眠ったお嬢様をこちらまで運んでくださったのですよ」
言いながらシェリーは持ってきていた温かい手拭いで顔を拭いてくれる。
よく見ると、服は昼間に着ていたドレスから、寝衣に着替えさせてくれたようだ。
「アリア急に寝ちゃって……お父様、怒ってなかったかなぁ」
ぽつりとつぶやく。
シェリーの手拭いを持つ手が、ピタリと止まった。
「大丈夫ですよ、お嬢様。ジェイド様によると、お嬢様がお描きになった絵をそれは喜んで保管していたそうですから」
さすがに喜んでいたというのは脚色がすぎると思うけれど。
シェリーの様子で不況を買ったわけではないことに安堵した。
(どんな顔、してたんだろ。見たかったなぁ)
私の絵を見たときの反応を自分の目に収めたかったなと思いつつ。その日は軽く夕食を摂って眠りについた。