ヒロイン覚醒要員である黒幕お父様の暴走を阻止します 〜死なないために愛嬌を振りまいていたら、不器用な愛情過多がとまりません〜


 何せどちらもシナリオ本編で描かれていた行事である。

(マスター試験はその名の通りだけど……魔闘祭典は、たしか一週間くらい続くんじゃなかったっけ? ザ、お祭りって感じの賑やかなイベントのイメージだけど)

 そして魔闘祭典の一番の目玉は、闘技場で開催されるデュエルだ。
 要は魔法や剣の心得がある人たちが競い合う帝国公式試合で、国民はもちろん諸外国からも多くの観戦者がやってくる。

 ルザークの話によると、マイスターであるクリストファーが魔闘祭典に出席すれば箔が付くし、盛り上がるらしい。

(そういう、ちょっと見世物っぽいこと、やらなそー…)

 それどころか興味があるのかすら謎である。

 というか、クリストファーが自分から進んで出席しないとわかっているからこそ、リューカスさんがわざわざ来たのかもしれない。

(来年の春だと、だいたい3ヶ月後くらいか……私、どうなってるんだろう)

 そもそもの話、クリストファーが悪魔と契約を結んでしまえば私の未来はかなり狭まってしまう。

 クリストファーも錬金術にのめり込んでお祭りどころじゃないだろうし。
 マスター試験も魔闘祭典も興味はすごくあるけれど、まずは目先のことを解決しなければ。

「到着いたしました」

 ふう、と息を吐いたと同時に、副団長ラオが振り返り知らせてくれた。

 目の前には、厚い石の壁に覆われた建物がそびえ立っている。
 正面にはグランツフィル騎士団の団旗が揺れ動いており、風に靡いて存在感を主張していた。

「わあ……」

 まるで小さな要塞をそのまま公爵邸の敷地内に収めたような造りの外観に、私は圧倒されていた。

 

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