最愛の義妹へ。 ~あの夏は、君の過去を知らない~
リビングのドアを開けて入ってきたのは、
いつでも笑顔を絶やさない母だった。
「瑠々ちゃん、どうぞ入って」
後から入ってきたのは、大企業の社長をしている父。
その手には黒いキャリーケースを持っていて、恐らく義妹の荷物だろう。
父親の後ろから、斜めに掛けたバッグのショルダーストラップを握りしめた義妹が入ってきた。
その顔は無表情で、何を考えているのか分からない。
でも、ショルダーストラップを握りしめているところを見ると緊張しているのだろう。