最愛の義妹へ。 ~あの夏は、君の過去を知らない~
涙で濡れている俺の顔を見ても、驚くこともなく、馬鹿にするでもなく。
黙って数秒だけ俺の顔を見た後、距離を取って座る。
俺は思わず、声を掛けた。
自分が泣いていたことなど忘れて涙声で「大丈夫?」なんて。
どっちかって言うと泣いていた俺の方が大丈夫じゃないと思うのだが。
どうしてか、声を掛けなければいけないと思った。
だって、今にも目の前の女の子が消えていなくなってしまいそうだったから。
「……、…、こころは泣いてるのに、あなたみたいに涙が外に出てこない」