22時からはじまる恋物語

「楠木君、K大附属だよね?凄いなーあそこめっちゃ偏差値高いよね。附属の生徒担当するのも緊張する」
「そうっすか」
「大学はそのままK大?」
「まぁ、今のところ」
「いいなー、受験戦争とは無縁かー。あ、でもその分高校に入るときに頑張ってるんだもんね」
「そうっすね」
「...」
「......」

か、会話〜!!

自分の持ち得るコミュニケーション能力を総動員して立ち向かうも、なかなか話が続かずに変な汗が滲む。

高校3年生と、大学3年生。3学年も歳が離れていると、こうも話題が見つからないものなのか。
いや、大学一年の後輩とはこんなに会話に苦労したことはない。

変にわたしがこの綺麗な顔立ちを意識してしまっていることと、彼のコミュニケーションを望んでいなさそうなその姿勢とが、絶妙なマッチングを見せているのだ。

駅まで普通に歩いて、15分。
こんなに15分が長く感じるのも、久しぶりだ。

「えっと...楠木君は、いつから通塾してたの?」

共通項が塾しかないわたし達の間で話題にできるのは、やはり塾のことしかない。

「中1です」
「へー。その頃から附属狙ってたの?」
「いや、あの塾経営してるの、うちの父親で。流れで中学入ったら、行かされました」

...おぉう。社長のご子息だったのね。

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