22時からはじまる恋物語

いくら要望が多いとは言え、現役高校生に講師のアルバイトをさせてもいいのかと思っていたけど、なるほど社長の息子なら納得だ。

...国宝級イケメンで、賢くて、仕事もできて、塾歴も長い上にバックグラウンドも完璧。

しまった。
先輩風吹かせられる場所が、どこにもない。

そう思うと何だかがくんと肩の力が抜けて、今までの変な緊張感が少しだけ解けた気がした。

構えたって、楠木君にカッコつけられるとこなんて何一つないじゃん。

いいや、なんかもう、いつもの自分で。

「そっか、塾歴もわたしよりだいぶ先輩なんだね!」
「いや、それとはまた話が...」
「いやもう先輩、聞いてくださいよー。わたし今、
彼氏に振られる5秒前なんですー」

あははっと笑いながら、今の高校生には通じないであろうネタをぶっ込む自分。
やばいな、相当疲れてる。

「有田先生の彼、見た?毎回車で迎えに来てくれるんだよー。それに比べてわたしの彼氏、どんなに夜遅くなっても一度も心配してくれたことなんてなくてさぁ。まぁそれだけじゃなくて、浮気もたっくさんされてるんだけどね!」

< 16 / 40 >

この作品をシェア

pagetop