22時からはじまる恋物語

「......久しぶり」
「......うん」

途切れ途切れで車が通り過ぎる中で、久しぶりに太一と面と向かって会っていた。

バイト先の塾の前。
この時間、空いているカフェがないわけでもないけれど、移動しようとしない太一を見て、この時間が長く続くわけではないことを悟る。

まるで、死刑宣告の前の囚人の気分だ。

「ごめんな、連絡、全然できなくて。あと......GWも、ごめん」

改めて謝られると、事実が改めて事実だったと押し付けられている様で、胸が痛んだ。

いや、何を今更。浮気されたのも、振られる5秒前なのも、わかりきってたことじゃん。

「いきなり来て、こんな話もどうかと思うんだけど......」
「......うん」
「ごめん......別れて欲しい」

......うん。そうだよね。そんな話だよね。

久しぶりに会った、連絡も途絶えていた彼氏。
話があるなんて言われたら、そりゃ、別れ話だよ。

しかも、何度も浮気されてるし。
もういい加減潮時なのも、十分わかってたし。

うん。そうだよね。終わりだよね。

わかってる。
わかってる......のに。


「......なんで?」
「え?」


口を付いたのは、自分でも信じられない言葉だった。

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