22時からはじまる恋物語
また明日。その言葉が、ちょっとだけこそばゆい。
そしてちょっとだけ、嬉しい。
本当なら、今わたしは計り知れない孤独に苛まれていたはずだった。
一晩中、1人でベッドで泣き尽くすんだと思っていた。
でも不思議と、もう涙は出てこない。
あれだけ泣いたから、心も少しだけ軽くなったんだろうな。
.......それにしても。
「本当、非の打ち所がないよなぁ」
会話の流れの中だった、テキストの話。
ちゃんと覚えていて、返そうとしてくれている。
仕事レベルも、あっという間に追い抜かされそう。
「......っし!」
パンっとだいぶ乾いた頬を叩き、気合を入れた。
もうすぐ夏期講習。受験生にとっては、とても大事な夏だ。
彼氏に振られて、凹んでる暇なんてない。
楠木先生に負けないように、わたしも頑張ろう。