22時からはじまる恋物語
「お、お疲れさん。あ、丁度いい、2人に紹介しとこう」
「え?」
ふと気付いたら先に仕事の終わった高崎君も近くにいて、その綺麗な男の子を見ていた。
でも高崎君わたしとは違い、どこか懐かしい表情で。
「おー!翔じゃん!」
「あ、お久しぶりです高崎先生」
「か、かける?」
フランクに手を挙げるその素振りは、普段生徒に向けているものそのもの。
新しい生徒さん?
頭の上にクエスチョンマークを浮かべるわたしに気付き、高崎君は言った。
「そっか、桜井は初めて会うか」
「あ、はい」
「こいつ、楠木翔。高1の夏までここに通ってたんだ。俺の担当生徒。今はもう高3だよな」
「あ、そうだったんだ」
高崎君は今年大学院に進んだ。もうベテランの塾講師だ。
わたしは大学1年の冬からここでバイトを始めたから、このイケメン高校生とはすれ違いで出会っていないことになる。
高3ということは受験生か。受験に向けてまた通塾再開するのかな?
なんて思っていたわたしは、教室長の言葉に再び目を見開くことになった。