#推しが幸せならOKです@10/15富士見L文庫から書籍化
「推しが結婚するってなったらファンはどう思うの?」
「え……?」
腕を組んだ息吹は、挑発的な視線を美聖へ送る。そんな視線さえも甘美で酔いで立ちくらみが起きる。
でも、今の美聖の目眩は確実に違う方向から殴られたからだった。
───推しが結婚するってなったら
あちこちで散々殴られた話題を、とうとう当の本人にも提示され、殴られる。
無意識のうちに歪みかける表情を何とか押し殺す。
美聖は「えっと」と考えるふりをして、息吹の鋭い眼光から逃げるように視線を逸らす。
「……衝撃、ですね。」
記憶から引きずり出した他人の言葉が、口から零れ落ちる。人の醜いところは、追い込まれた時ほど頭の回転が速くなることだ。