#推しが幸せならOKです@10/15富士見L文庫から書籍化

「……あっそう。」





しばらく美聖を見つめていた息吹は、ふ、と力が抜けたようにそう零すと。


初めて美聖から静かに視線を逸らし、考えの読めない顔で、そっと下唇を舌で舐める。



それから、不意にキュ、と口角を上げて画面の向こうで見る笑顔になると、美聖の顔を見た。




「それを聞いて、安心しました」




息吹は女王のように強気な笑みで言うと、右足の爪先を一歩、美聖の方へクロスになるように差し出す。

その動きに美聖は彼女の足元へ視線を奪われる。




「この間のお礼はもう済んだし、アイドルがファンに用になることはもうこの先ないわ」




息吹はそう言いながら、斜め前に差し出した足を横一直線に流していく。


ブランドのハイヒールがはっきりと、美聖と息吹の間に境界線を引く。その動きでさえ美しい。