#推しが幸せならOKです@10/15富士見L文庫から書籍化
クリーニングをかけたコートと、その上にまた小さな紙袋。
その小さな袋を取り出せば、美聖が好きなチョコレート専門店のものだった。
「……あ」
そのチョコレート専門店の袋には、似つかわしくないものがひとつ。
《《%color:#adadad|───疲れてる時には珈琲よりほっとレモンの方がいいですよ》》
ぬるくなったほっとレモンが入っていた。
《《%color:#adadad|───ちゃんと寝てくださいね》》
「──……やり直したい」
思わずこぼれ落ちた美聖の独り言は、弱々しい。戻ったところで、どの台詞が正解だったのか、美聖にはわからない。
ただひたすらに軋む胸を抑え込むように、美聖は紙袋を抱きしめた。