#推しが幸せならOKです@10/15富士見L文庫から書籍化
「いやあ、忙しいのにごめんね。こないだ事務所ですれ違ったディレクターが柊くんのことえらく気に入っちゃったみたいで」
年下の美聖に媚びへつらうようにニコニコと笑うのは、マネージャー2年目の岩井《いわい》という男だった。
彼の運転する車に乗った美聖は、「はあ」と気の抜けた返事をして、後部座席に寄りかかった。
美聖の曖昧な反応に、岩井は気まずそうにへらへらと笑う。
「……」
美聖は冷めた目でそののっぺりとした岩井の顔を一瞥すると、窓の向こうへと目を逸らした。彼に興味などなかったのだ。