#推しが幸せならOKです@10/15富士見L文庫から書籍化
スモークガラスの窓の向こうに広がる空が青々としている。
既に桜は散り、梅雨前の穏やかな気候が日々を流し込む。
美聖は気がついた高校3年になっていた。中学の時には弓道部に入っていたが高校にはなかったので帰宅部になった。
仲の良い友達と遊び、面の良さだけで女子にちやほやされ、ぬるい環境に浸かりきって気づけば進路を決めなければならない時期になっていた。
『え?お前らもう進路決まってんの?』
『おれは手堅く公務員かなー。高卒も考えてるけど、よくよくのこと考えたら大学は行っとこうかなとか、まあ、そんな感じ』
『私は看護師かな。美聖くん入院する時は私の職場に来てね。愛をこめて点滴してあげる』
『誰よりもガサツな女が言ってんなよ。美聖、殺されるからやめとけ。え?俺?俺は割と英語好きだから英文科進んで留学行きてえかなあ』
『オレも海外行きてー!ちなオレは姉貴と同じ美容師目指してるから専門かな。で、美聖は?』
ぬるま湯に浸かっていたのは自分だけだと、その時、美聖は気がついた。