#推しが幸せならOKです@10/15富士見L文庫から書籍化
メンバーの入れ替わりの間にメイクスタッフに髪を整えられる。
カメラが回らなくなった途端、疲労がどっと身体に現れる。彼女たちに比べれば、美聖の撮影時間など鼻で笑ってしまう程だろう。
「(やっぱり俺には無理だな)」
脳内をチラつくのは、現場で一番最初に目にした息吹の姿だ。下唇を噛む。
自分の中で、また苛立ちが募る。
「息吹さん入りまーす」
「よろしくお願いします」
凛とした声に、現場に入ってきた息吹に、美聖は今までとは違う緊張感が全身を駆け巡る。
最初に見た衣装とは違い、制服姿の息吹に美聖は不自然に目を逸らしてしまう。
自分が異性に対してこんなに気持ちを掻き乱されるのは初めてで、動揺の整え方がわからなくて焦る。