#推しが幸せならOKです@10/15富士見L文庫から書籍化
ふ、と視線を斜め下に移し、子供のように呟く。
「……息吹さんにだけですよ。息吹さんだから。」
美聖がその言葉を告げた次の瞬間、息吹が勢いよく椅子から立ち上がる。
「息吹さん?」
美聖が驚きで見上げた先、息吹はそっぽを向いたままやたらと早口な言葉を放つ。
「私もう行かなきゃ。080-1224──」
「え?」
「覚えました?今の私の番号なので、後で電話ください」
「あ、は、はい!」
美聖は俳優でよかったと改めて思った。今まで鍛えた記憶力はこの日のためにあったのだと、馬鹿なことを割と本気で思った。