#推しが幸せならOKです@10/15富士見L文庫から書籍化
片平は風の噂で耳にしたそれを、思い切って木村に尋ねる。今、彼が最も危惧していることだ。
「……なあ、ぶっちゃけ、あの噂ってマジなの?」
潜められた声に、片平の険しい表情に、木村はすぐに察したようにくたびれた顔をする。
それから、木村は化粧けのない額に手を添えて素っ気なく答える。
「──それは"極秘"だから」
片平は、彼女の答えに、歯切れ悪く「そうか」と答えた。
その視線は自然と美聖へ向かい、サングラスやマスクや帽子で隠されてもなお、幸福感が隠しきれていない彼を見て、胸を痛めた。