#推しが幸せならOKです@10/15富士見L文庫から書籍化
〈あれ、美聖くんだよね?もしもし〉
「はい!ムーンプロダクション所属の柊 美聖です。よろしくお願いいたします」
〈オーディション?〉
くすくす、と息吹の笑い声が電話越しに美聖の鼓膜を優しく撫でる。
その優しい音が、美聖の胸をくすぐる。むず痒いのに、ずっとこうしていたい。美聖の口元が自然と口角を上げる。
〈ムーンプロダクション所属、ガールズグループcoc9tailの黛 息吹です。よろしくお願いいたします〉
「合格です。最高です」
〈まだ挨拶しかしてないのに?〉
「神に挨拶してもらえたんですよ?」
〈(また会話が成立できてない)〉
真剣な美聖に、息吹が楽しそうに笑う。
電話越しに聞く息吹の声は、画面越しやマイク越しで聞く声よりも、少しだけ果実の甘酸っぱさを付け足したような音がする。