#推しが幸せならOKです@10/15富士見L文庫から書籍化
「仲良くしてあげて。あの子、ファンはたくさんいるけど、友達は少ないの、特に男の子の友達なんて、今まで聞いたことない」
木村はそれだけ告げると、美聖の返事を待たずに慌ただしい現場の方へ行ってしまった。
美聖は無言で木村の背中に向かって頷いた。
「美聖くんだっ!サインくださいっ!親戚の子がね、美聖くんのことめっちゃ好きなの」
「色紙なくない?」
「このワンピースに書いてもらう?」
「それはさすがに衣装だから」
「メイ!見て見てっ!柊さんの差し入れこないだ食べたいって言ってたやつ!」
「えー!嬉しいー!」
coc9tailの休憩は、高校の休み時間に似ていた。
先程までカメラに向かって切ない顔を向けていた彼女たちは、パイプ椅子や機材が並ぶところで楽しそうにはしゃいでいる。
美聖はそんな眩い彼女たちにひたすら瞬きを繰り返すだけ。