#推しが幸せならOKです@10/15富士見L文庫から書籍化
今更ながら息吹も周りの目が気になって、なるべくあたりを見ないようにしながら、ぐいぐいと美聖を出口まで引きずって歩く。
「行こう。1階のカフェでいい?」
「……」
外に出て通路を歩きながら、返答のない美聖に、息吹は振り返る。
「(……あ)」
振り返った先、美聖は、息吹と繋がれた手を見つめて恥ずかしそうに口元を手で覆い、髪の隙間から覗く耳を赤く染めていた。
息吹は先程とは打って変わって心が満たされていくのを感じながら、口角を上げる。
「ほら、美聖くん、早く行こ」
「……うん。」
ぎゅう、と手のひらの力がどちらともなく強まった。