#推しが幸せならOKです@10/15富士見L文庫から書籍化




美聖も役柄ではそれなりに減量したりもするが、息吹と比べればそれはほんの一定期間だけだ。


息吹の完璧な美しさは、彼女の裏側にある血の滲むような努力でより完璧に裏打ちされているようなものだ。


「だからね」と息吹は楽しそうに店内の装飾を眺めながら続ける。




「今日勇気出して美聖くん誘ってよかった」

「、」

「ずっと通ってた場所なのに、ここのご飯がこんなにも美味しいこと知らずに終わるところだった」



息吹の言葉に、美聖の胸が不意に苦しくなる。現実は甘くはない。



「一度は絶対来てみたかったんだ。退所したらもう来れないから」

「……。」



息吹の言葉には、悲しさも名残惜しさもない。淡々とこれから起こりうる未来を告げるだけ。


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