#推しが幸せならOKです@10/15富士見L文庫から書籍化




「まったく……何を言い出すかと思えば、」



はあ、と溜息を零す片平に、美聖は頭を抱える。


大手家電メーカーのコマーシャルの撮影の合間に、この人何やってんだ本当に、と片平も抱えたくなる頭で美聖を見下ろす。



写真集とCMの撮影のために、緩くパーマのかかった美聖は、男の片平から見ても羨ましいほどに綺麗だ。



「……怖いんだ」



椅子に座ったまま、美聖はぼそりと零す。


その顔は絶望に満ちていて、昨年、主演男優賞を獲得した時の映画の役柄に酷似していて、片平は才能の無駄遣いだなあと冷めた目で眺める。



世界にのめり込む美聖は、そんな片平に気づく訳もなく絶望に満ちた顔で続ける。


やたらと憂いを帯びた美聖の美しい顔は、女性の心を射止めるには容易い。




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