#推しが幸せならOKです@10/15富士見L文庫から書籍化
「お互いにパンケーキ買ってきちゃったね、しかも、同じお店の」
「うん。俺が仕事終わってそっち行く前に聞けばよかったね」
「ううん」
息吹が首を横に振って、見下ろしていた袋から顔を上げる。
きっと美聖がここに来るまでずっと練習していたはずなのに汗ひとつない顔は化粧の崩れも全くない。
「離れてる時も考えてることがこんなに同じだなんて、笑っちゃうね」
「……うん」
息吹の大きな猫目に似合うアイラインは彼女の美しさに加え孤高の強さも主張する。
それなのに、今、美聖の前で目尻を垂らして笑う彼女は、年相応の、お茶目さが滲んでる。
「(ああ、可愛いな)」
美聖は自分でも無意識のうちに、息吹の顔へ手を伸ばしかける。
手を伸ばして、触れて、どうしたいのかなんて美聖自身もわかっていない。
ただ、触れたい。潜在化は、それだけだった。