#推しが幸せならOKです@10/15富士見L文庫から書籍化
「だから、私の完璧って壊れかけだし一生懸命光るものを集めてるだけなの」
ふふ、と笑う息吹には微塵も悲しさが含まれていない。
それはたったひとりで抱えてきたものを、たったひとりで、誰の力も借りずに片付けた証拠だった。
美聖は今すぐにでもその華奢で儚げな息吹の身体を抱きしめて、自分の胸の内に収めてしまいたくなった。
「だから、美聖くんが私のファンだって知って、私がどれだけ嬉しくて、どれだけ励まされたか、」
でも、まだ、息吹の話は終わっていない。美聖がどう動くかは彼女の最後の言葉をきちんと受け取ってからだ。
「……泣きたい夜も、立ち止まりたくなった日も、美聖くんがあんまりにもキラキラした顔で、年上の芸人さんにも強面の俳優さんにも厳しい女優さんにも可愛い若手さんの前でも、凄い経歴の監督の前でさえも、堂々と、私のことを褒めるものだから、ファンの想いを健気に伝えてくれるから、」
息吹が笑う。泣きそうな、嬉しそうな、複雑に絡み合った感情を集約して、笑う。