#推しが幸せならOKです@10/15富士見L文庫から書籍化
美聖は息吹のスマホの画面が何気なく視界に入る。そこに表示されていた文字を見て、唇が言葉をなぞる。
「マンション……空き室状況……?」
息吹は美聖の顔を見上げて、それから彼と同じ視線を辿るように自身が手にするスマホの画面へと黒目を戻す。
それから、暗くなりなかけた画面をタップして明るくする。その人工的な明るさに反して、息吹の表情は難しそうに顰められたまま。
「そ。今住んでるところ事務所専属のマンションだから、退所したらそこにはもう住めないし、だったら早めに引っ越そうと思って」
「……。」
ふとした瞬間、息吹が芸能界からいなくなる未来が確定していることを、美聖はきつく目の当たりにする。