#推しが幸せならOKです@10/15富士見L文庫から書籍化





「いやごめん、なんでもない。忘れて」




美聖はそう言って息吹に苦笑する。息吹は誤魔化す美聖の瞳を、じ、と力強い瞳で見つめてくる。


美聖は飛び出しかけた心の内が息吹に見透かされてしまいそうで、思わず視線を逸らして俯く。




「(俺の馬鹿)」



最近、息吹と一緒にいる時間が増えたせいで勘違いしそうになる。触れそうになる。踏み込みそうになる。



未だにcoc9tailの結婚の噂は芸能界をささやかに賑やかせている。


その当人を掴めないまま、噂だけが独り歩きしては、coc9tail解散後、一番人気なのに唯一芸能界を去る息吹に白羽の矢が立つのも無理はなかった。




『coc9tailの息吹ってIT社長とデキてるらしいよ』



そんなひそひそ話が不意打ちのように美聖の耳に滑り込んでくることも増えた。


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