#推しが幸せならOKです@10/15富士見L文庫から書籍化
その後ろ姿を眺め、見えなくなったところで、美聖の身体は力をなくし、そのまま床へと倒れ込んだ。
頬に触れる床がやたらと冷たい。ああ違う。
「俺の顔が熱いのか」
美聖の声がわずかに跳ねる。わかりやす過ぎる。息吹が着替えと帰り支度を終えて練習室に戻ってくるまで、美聖は床に倒れ込んだまま顔を両手で覆っていた。
練習室を出て、タクシーが事務所の出入口に到着するまでその近くのエントランスでふたり待機する。
既に照明も最小限まで落とされて人気のないそこは、やけに静かだ。
先程のこともあり、お互いに言葉を探していたが、沈黙を破ったのは息吹だった。
「……それで、いいの?」
「え?」