#推しが幸せならOKです@10/15富士見L文庫から書籍化
そして、思わず緩む口元をそのままに、美聖の前まで戻って、いたずらに言う。
「美聖くんって、私のこと本当に好きなんですね」
何気ない言葉なのに、ファンにだってよく使う「好き」なのに、無意識のうちに息吹の声は、その部分だけが少し揺れた。
美聖はきっと気がついていない。息吹も声に出してみて、初めて気がつく。
美聖は「はあ────」と呼吸を整えるように長い息を吐き出すと、そっと、大きな手を外し、小さな顔を息吹の前へ晒す。
あまりにも綺麗で、優しい顔は、老若男女を魅了する。そんな美聖が、耳まで赤く染め、眉間にシワを寄せて子供みたいな顔をする。
「好きだよ。本当に好き」
「……、」