#推しが幸せならOKです@10/15富士見L文庫から書籍化
息吹は「好き」を貰うことが多い。
今まで数え切れないほどの好きを貰ってきた。
全部全部嬉しかった。宝物だ。貰う度、受け取る度、笑顔になった。
それなのに、今、美聖に与えられた「好き」に、息吹は上手く反応できなかった。
笑顔になりたいのに、表情はぎこちなくなる。
「あ、え、とっ」
息吹は、完璧な笑顔で商品になる自分が溢れかえる部屋を抜け出し、驚く美聖に言う。
「さっ、先にお風呂頂いてもいいですか?」
「え?あ、うん、もちろん」
「ありがとう。……ありがと」
振り向いてすらお礼を言えない自分に、今度は息吹が長いため息を吐き出す番だった。