#推しが幸せならOKです@10/15富士見L文庫から書籍化
数度のノックを繰り返し、返事がないことを確認してから「ごめんね、入るよ」と美聖は扉を開ける。
息吹は未だ白を基調としたベッドに横になっていた。黒く艶やかな髪が、カーテンの隙間から差し込む光によってよく映える。
「女神様おはよう。あ、いや、息吹さん、おはよう」
「……んー」
「木村さんが迎えに来る前に少しでも何か食べよう」
「んー」
多忙だとしても、同じ朝を迎える日はこうしてふたりの生活は重なる。
息吹は枕に顔を埋めたまま「んー」しか言わない。が、起きなければとは思っているらしく、力のない右腕が、そろそろ、と美聖の前へ伸びてくる。
「息吹さん、起こすよ」
「んー」
美聖は息吹の細い腕を掴み、もう片方の腕を彼女の首と枕の隙間に差し込んで、ぐ、と抱き起こす。